雨の国の王者

探偵小説好事家本人のためのノート

西東登『狂気殺人事件』青樹社

 題名だけで、もう合格。天下一品のD級“猟奇探偵小説”なのだ。
 けれども、名は体を表さない。まってましたのタイトルとは裏腹に、内容はいたって穏当で現実てきな「子どもの誘拐を扱った探偵小説」。
 警察官あがりのタフな私立探偵<毛呂周平(もろしゅうへい)>三度目のお目見えだが、先のとおり、ハードボイルド探偵小説ではなく、あくまでも謎ときが主眼の社会派探偵小説。
 後味云云等のことはここで記すまい。ひとことだけ述べておくと、この作品もまた、西東登の作品らしく、登場する女性たちの、その変わり身の早さに唖然とすること請け合い。
 2025年7月18日読了。