雨の国の王者

探偵小説好事家本人のためのノート

高橋泰邦『賭けられた船』講談社

 はじめにお詫びしなければいけないのだが、わたくしは、似非高橋泰邦ファンだったのである。正直に話そう。先に、本ブログのカテゴリ「思考機械」『その140They’re the nameless sailor men』で挙げた高橋泰邦作品のうち、わたくしは『軍艦泥棒』までしか、実は読んでいないのだ。つまりは、『サドン・デス』、『南溟の砲煙』、『南溟に吼える』、『群狼の海』は、未読である。
 言い訳をしておく。
 海洋文学まっしぐらと語っておきながら『サドン・デス』なんぞのような作品を書くとはけしからんと、当時の幼いわたくしは感じたわけね。だからかどうか、それ以降の作品には、食指が動かなかったのかもれしれない。それに<南溟>の二作は、本家(<ホーンブロワー>シリーズ)を一冊も読んだことがなくて、本家読了後に手をつけようかとあらぬ考えを持っていたのも事実だ。
 そういう自分を反省して、既読の作品を読み返そうとの試みを始める。
 
 まずは、長篇三作目、『賭けられた船』から。
 決して作品数が多くはない高橋泰邦でもベストに推してもよいぐらいの傑作。スリラー色が濃厚で、ある犯人の意外性も充分。
 気になったのは、今回は、安楽椅子探偵となる名探偵<大滝辰次郎>は『衝突針路』登場時とはキャラクタが変化しているようにも感じるが、いかがか。
 2025年6月4日読了。 

高橋泰邦『賭けられた船』講談社